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少しタガのはずれた絵日記


by oka002
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『上海の伯爵夫人』

昨日、3月3日からいよいよ公開の問題作、『パフューム』を早速観て来ました!
…と言いたいところですが違います。
同じく昨日、これは広島でようやく始まった『上海の伯爵夫人』を観て参りました。
だってこちらは上映館が一つしかないし、上映期間も2週間ぐらいしかありませんからもたもたしてるとまた見逃してしまいます。

『上海の伯爵夫人』_a0063926_21595283.jpg
それにしても、上映時間11:00~って何でそんなハンパな時刻に始めるんですか。
終わったら13:30ぐらいになって、どこでお昼にしようかうろうろ迷ってるうちにランチタイム終わっちゃう恐れがありますよ。
てなわけで前夜のうちにネットで映画館周辺のレストランを調べ上げ、ここと言う所を決めておいてクーポン券まで印刷して準備を整えました。
Hotpepperさん、いつもありがとう!
(普段はグダグダのくせに、こういう時だけ妙に綿密な計画を立てる奴)
それで終了後にはHearty soupさんで『春一杯プチサンドセット』をいただきました。
可愛い丸パンにはサーモン、レタスにクリームチーズが挟まってます。
メインディッシュは数種類から選べるスープ。初回は香り高いカレースープにしました。
サラダとデザートの杏仁プリン、ドリンクにはコーヒー。
大変美味しかったです。って全然映画の話になってないじゃないですか。

『上海の伯爵夫人』_a0063926_220683.jpg
しかし私1人だけ遊んで帰宅するのも家族に申し訳ないことでして。
広島駅から電車に乗る前に母に電話を入れ、何か要る物はないか尋ねました。
すると「ひな祭りの後夜祭(?)をするので、ケーキでも買って戻れ」という返事。
それじゃあ、てんでお馴染みのマリオデザート広島ASSE店に立ち寄り買ったのが、ご覧の『黒胡麻タルト』です。
サクサクのタルト生地に黒胡麻のペースト、黒胡麻のクリームを敷き詰め黒豆をトッピング。
クリームの下にはさりげなく松の実も入った香ばしい逸品です。
家族にも好評でした。って一向に映画の話する気配もないじゃありませんか。



『上海の伯爵夫人』_a0063926_2203864.jpgある年齢以上の方はご存知だと思いますが、1930~40年代の上海を舞台にした一連の漫画シリーズがありました。
作者は森川久美さん。以前『イスタンブル物語』という作品をご紹介した方です。
『蘇州夜曲』に始まり、『南京路に花吹雪』『花は辺りに雨と降り』そして『Shang-hai 1945』で完結するこの作品群。
これと同じ時期を扱った映画が作られ、しかも何かシチュエーションも重なる部分があったりするので、言わばノスタルジーに駆られて行ったわけです。
そういう人は私だけじゃないと見えて、観客はほとんど女性、それも私と同年代以上の方が多かったです。
「この人たちも、『森川ワールドの実写版』を期待して観に来たのかな」とちょっとした連帯感を覚えたりしまして。←オイッ(゚Д゚ ;)!!
上映開始前はそんな感じで、水分補給のためにお茶でも用意しとかなきゃねぇとか暢気に構えていたのですが、いざ映画が始まると目が画面に吸い寄せられ、お茶を飲むことも忘れてしまうほどでした。

ヒロインのソフィア・ベリンスカヤ伯爵夫人(ナターシャ・リチャードソン)は元ロシア貴族。
革命により亡命を余儀なくされ、娘や親類とともに遠く上海まで逃れてきました。
極貧の亡命生活を強いられる一家のため、美貌のソフィアはバーで働き生計を立てています。
さて、同じ上海にジャクソン(レイフ・ファインズ)というこちらはアメリカ人もおりました。
この人は元外交官でしたが、事故やテロで妻子を失った上に目も見えなくなり、自棄気味になって夜の街をさまよう日々。
ある夜、たまたまソフィアの勤める店に来たジャクソンは、危うく暴漢に襲われるところだったのをソフィアの機転で救われます。
ソフィアの身の上を知ったジャクソンは、自分が作ろうとしていた理想的なバーの花形ホステスとして彼女を迎えることにしました。
店はたちまち大評判になり、国内外の要人も訪れる人気店になります。
しかし、この店を巡ってとある日本人の陰謀が渦巻いていました。
そして日本軍の侵攻が始まり、上海を戦火が覆います。
脚本は『日の名残り』で有名なカズオ・イシグロ。そして、最後まで何物か得体の知れない日本人・松田は、かのヒロユキ・サナーダです。

姑や義妹の非難に耐えながら流れ勤めに出るソフィアの苦境は、ダンディな装いで高級バーに出入りし競馬を楽しむジャクソンの華やかな暮らしとは冷酷なまでに対照的です。
しかし2人とも人生の中で大切なものを失い、心に大きな傷を負っているという点では共通しています。
その2人が、単なるビジネスの相手から次第に心を通わせるようになった矢先に別れの時が来る。
混乱の中ジャクソンはソフィアと娘を取り戻しますが、今度は戦争が全てを打ち壊してしまいます。
しかもその戦争は日本が仕掛けたもの。民族や人種を問わず逃げ惑う人々の姿に胸が痛みます。
余韻嫋嫋たる胡弓や琵琶で奏でられるBGMが悲愴感を倍増するんですよね。
再び流浪の身になり、避難民を満載した船上で寄り添う2人。
やはり避難してきた中国人トランペッターの演奏に聞き入る娘。
かすかな希望を残して終幕です。
華麗で哀愁に満ちた、心に沁みる良作だと思います。
by oka002 | 2007-03-04 22:01 | 世界は舞台 人生は花道