少しタガのはずれた絵日記


by oka002
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ミニシアターが満席になった夏の日

映画監督の黒木和雄さんが亡くなりました。
ニュース記事はこちらほか多数
生涯に数々の名作を出された人ですが、2004年に公開されたこの作品はとりわけ忘れられない一本です。

a0063926_22315966.jpg父と暮せば

広島市民として絶対に見に行く義務があると駆けつけた映画館。
そう思った人は私一人でなかったらしく、いつもは入りがよいとはいえないミニシアターなのですが、この時ばかりは客席が一杯になりました。
外国人の方もちらほら。中にがっしりした体格の男性(もしかして米軍の人?)が松葉杖をつき、ガールフレンドらしい日本女性に助けられて着席したのが印象的な光景でした。




原爆で父や友人を失い、一人生き残ったことに後ろめたさを覚える女性。
偶然会った男性に心ひかれながらも「うちは、幸せになってはいけんのじゃ」とつい自分を抑えてしまいます。
そんな彼女の前に、「恋の応援団」が現れます。それは亡き父の霊でした。

被爆60周年を前に作られたこの映画は、国だの人だの、あるいは何か大義のために命を捧げるといったヒロイズムとは無縁の戦争映画です。
特に裕福でなくても、庶民には家族と仲良く過ごすささやかな幸せがあります。
戦争はそんな幸せさえ奪い、無残な死を遂げる人がいる一方で、生還者も生きることに罪悪感さえ持たざるを得なくなるのです。
終戦後、独りぼっちになった娘はそれでも何とか働き口を見つけ、食事の仕度もすれば恋もする。
折りしも季節は初夏のことで、廃墟となった広島でも町外れの林道は滴るばかりの緑。
何気ない生活を淡々と描くことで娘の悲しみや苦しみがかえって引き立ち、観客も娘の思いを自分のものとして共有できたように思います。
幽霊なのに底抜けに明るい父。ユーモアたっぷりに娘を励ます場面はとても楽しいのですが、これも娘を哀れむ余り成仏できずにいる有様と思うと切ない。
初め寂しげだった娘の表情が父の後押しもあって徐々に和み、やがて男性のプロポーズを受ける決断をします。
ラストシーンで見せた娘の笑顔が美しかったこと。
全編から静かで力強い反戦のメッセージを受け取りました。
終演後に客席から拍手が起こるという奇跡まであったくらいです。

素晴らしい映画を作ってくださって、ありがとありました。
黒木監督のご冥福をお祈りいたします。

「父と暮せば」オフィシャルホームページ
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by oka002 | 2006-04-13 20:37 | 世界は舞台 人生は花道