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少しタガのはずれた絵日記


by oka002
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死者の書

昨日から広島で始まりました、「国際アニメーションフェスティバル」。
国内外の秀作アニメが出揃う中、とりわけ楽しみに待っていたのが今日ご紹介するこの作品です。
製作は川本喜八郎さん。
『三国志』など、NHK人形劇シリーズでの素晴らしいお仕事はつとに有名ですね。
私自身も『三国志』を感嘆しつつ見ていた口なので、またあの美しいお人形さんたちに会えると思うと本当に嬉しくて、公開を心待ちにしていたのです。
実際映画が始まりますと、画面の美しさに見とれる以上に懐かしさがこみ上げ、深く感動してしまいましたよ。
「こ、この顔は劉備玄徳だ!ああっ、この人も淑玲(玄徳夫人)そっくり」とか←違

さて、『死者の書』というちょっと不気味なタイトル。
昔のベストセラー本に『チベット死者の書』なんてのがありましたが、全く別物です。
日本の奈良時代を舞台に、当麻曼荼羅を作ったといういわゆる中将姫の伝説をモチーフとした華麗な時代絵巻。←本当に美しいので、「絵巻」と言うのに相応しいです。
原作は折口信夫という方だそうで。(お名前ぐらいは聞いたことがあるんですが、不勉強につきそれ以上の知識は皆無)



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郎女という深窓のお姫様が仏道を志し、写経三昧に日を送っていました。
千部のお経を書き写し終えた頃、姫の目に仏のお姿がはっきりと見えるように。
(ちなみに当麻曼荼羅に描かれている世界は「観無量寿経」といって、仏や極楽の模様を観想するよう説いております)
それはともかく、この姫はとりわけ霊感が強かったものか他の物まで見えてきました。
すなわち、遠い昔に非業の死を遂げた大津皇子の亡霊です。
皇子は亡くなる直前に恋していた女性に未練を残し、その女性の子孫である郎女に魅入ったのでした。
お寺に籠った郎女を皇子の霊が夜毎訪れますが、「南無阿弥陀仏」という姫の声にあえなく退散。
その姿は仏の姿に重なり、姫は仏の半裸の体を覆う大きな布が欲しいと思い立ちました。
蓮の茎からとった糸で反物を織り上げ、正方形の白布に裁ち縫いました。
自分の見た極楽浄土の絵を描きつけ、姫は見事な曼荼羅を完成させたのでした。

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テレビの人形劇ではさすがに手足を動かす棒が見えていましたけど、「人形アニメ」というだけに今回はそのようなことは一切なし。
それだけに、気が遠くなるような作業で作り上げたのだろうなと製作者の苦労がしのばれます。
着物の袖や裾、肩に掛けた領布が翻る動きの優雅なこと。
それにもまして驚異的なのは、髪の毛がなびく様子まで一筋一筋丁寧にこしらえているところです。
余りの凄愴美に、見ていて胃が痛くなるほどです。←待て

『死者の書』は人形主体の本編ですが、同時上映の『久方の天二上』ではこのお話の背景となる歴史や文学、民間伝承などがこれも美しい映像をふんだんに交えて紹介されます。
本編が始まるまでちょっと待ち遠しいですが、大いに理解の助けになりますので見て損はありません。
古代の人々が恐れ敬った聖地・二上山を中心に、あたかも往時の平城京界隈を歩いている気分になるでしょう。
by oka002 | 2006-08-25 22:58 | 世界は舞台 人生は花道