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少しタガのはずれた絵日記


by oka002
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アナトリアの調べに酔いしれる 『黒海吟遊』

本日は思うところあって、皆様をトルコへご案内したいと思います。
前にも書きましたが『シルクロード』世代の私はこの辺の民族音楽に一時期夢中になっていましたので、自然とコレクションされているわけで。
先にご紹介した『天山奏楽』と同じシリーズです。
こちらも名手の演奏を満喫できて、本当に好きな1枚。

アナトリアの調べに酔いしれる 『黒海吟遊』_a0063926_21242487.jpg
『黒海吟遊』トルコ・音紀行
(Ethnic Sound Collection)
聞いて驚け、なんと1980年の録音です。
CDとして発売されたのは88年らしいけど。

←やはりジャケットデザインが素敵なこのシリーズ(惚)


トルコ音楽と言っても、どんなのかピンと来ない方も多いでしょう。
ちょっと年代の高い人だと「ウシュクダラ」という歌を日本語訳で聴いたことがあるとか。
(でも私は知らなかったぞ←力説)
その「ウシュクダラ」がこのCDでは第1曲目に収録されています。もちろん原語で。
ウシュクダラとは、トルコの首都・イスタンブール辺りの町の名です。
その町で恋人の訪れを待つ女性の他愛ない歌、らしい。

  ウシュクダラに行ったら雨だった、恋人の着る長い裾は泥だらけ。
  …ハンカチにお菓子を包んだ、彼を探したらすぐそばにいた。

この歌の後が、私の一押し「バーラマ独奏」です。
バーラマというのは卵形の胴に長い棹のついた撥弦楽器。
ギターに似てより深く愁いを帯びた音色を響かせる。
似た形の楽器はいろいろあり、バーラマより大きなのはディワン、小さいものはジュラと呼ばれています。
さて、バーラマの妙技を13分近くにわたって堪能できる2曲目。
草原を疾駆するような旋律は、規則正しいリズムを刻むかに見えてその実細かな技巧を凝らし変幻自在、聴き手を翻弄します。
中盤になると曲調ががらりと変わり、9拍子という変則的なリズムに。
トン、トン、トン、スットントンという少しつまづくような感覚が不思議と心地よい。
終盤は一転して急速なリズム、明るく華やかな地中海地方の民謡で締めくくります。
「シルクロード」にも登場した、アシックと呼ばれる吟遊詩人の姿が蘇る。
本作中の白眉です。
演奏はアリフ・サーさんという方。
バーラマの他にも弦・管・打とありとある楽器をよくする天才のようです。

このCDには全16曲収録されています。
先の2曲目の他にももちろんいい曲はたくさんありまして、特に好きなのは
10曲目「私の心~さようなら(アゼルバイジャン民謡)」
13曲目「ディワンとホイラート」などです。
さて本CDで素晴らしい技を披露してくれた演奏者たちを書き出すと下の通り。

ウミット・トクジャン:歌
メフメット・オズベック:歌、ジュラ、ダウル
アリフ・サー:バーラマ、カバック・ケマネ、タール、ダウル、ジュラ
        メイ、ズルナ、カヴァール、歌←これだけ演奏できる、やっぱり天才

ジュラとバーラマはもう出ましたね。タールも撥弦楽器です。
カバック・ケマネは弓奏楽器。バイオリンの仲間ですが肩に担がず膝の上に立てて弾く。
ダウルは打楽器。メイ・ズルナ・カヴァールは管楽器です。

…それにしても、トルコの人名は何でこんなに可愛いのでしょうね。←何か違う


【追記】 何と、全く同じラインナップのCDが違うタイトルでアマゾンに置いてありましたよ。
興味のある方、試聴はできませんけど一度ご覧になってみては。

音の世界遺産 トルコの吟遊詩人~ウシュクダラ
by oka002 | 2006-04-20 21:25 | 天上奏楽