少しタガのはずれた絵日記


by oka002
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ブオーノ・パチーノ! 『ヴェニスの商人』

a0063926_1354838.jpg先ほど見てきました。例によって

【まずはネタバレ抜きの感想】
本当の名作には、有給休暇取ってでも見に行く値打ちが十分あります!

映画が終わった後立ち寄ったカフェで
激旨ミックスジュースを「プハー」と飲み干し〈参考資料〉
来し方行く末に思いをはせながら…




「高利貸し(こうりがし)と言っても、アイスキャンデーのことじゃないよ」
という駄洒落をご存知の方、相当な通人ですね。
  
原作を読んだのはたぶん小学校高学年ぐらいだったと思います。
誕生日のプレゼントに本をもらったのです。
(偕成社かどこかの児童書で、もちろん日本語)
ですのでお話の筋はあらかた分かっていたのですが舞台は当然見たことがなく
映像の形で今回初めてこの傑作古典劇を勧賞することになったわけです。

ここで光るのは何といってもアル・パチーノ扮するユダヤ人、シャイロックです。
原作だと冷酷で容赦のない金貸しなんですが、この映画では評価が180度変わります。
当時のヨーロッパ社会で広く行われていたユダヤ人に対するすさまじい差別が
ヴェネチア人の享楽的な風潮とともに徹底して描かれており、
「こんなひどいことを日常的にされてたら、ああいう態度にも出たくなるよね」と
ついシャイロックの肩を持ちたくなるのです。
シャイロックに娘がいる設定もまた、彼の人物像に深みを持たせています。
ロレンゾーという男と娘が駆け落ちしてしまい(この二人どこで接点があったんだか)、
降りしきる雨の中、娘を探し歩いて泣き叫ぶシャイロックは哀れというも愚かなほどです。
娘はともかくロレンゾーという男が、なんら良心の呵責も見せず気楽でいるのがまたやるせない。

ロレンゾーに限らずここに出てくるヴェネチアの男性陣は、揃いも揃って軽佻浮薄の権化なのです。
色男のバッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)にしたところで、ポーシャの財産を当て込んで結婚したに等しい。
自分が放蕩の末に作った借財を、奥さんに肩代わりさせたような形です。
ポーシャの侍女を娶ったグラシアーノもそれ。
どこかで見た兄さんだと思ったら、『ラブアク』のコリン(クリス・マーシャル)でしたよ。
こんなところでまた会えて嬉しかったですけどね。再会といえば同じ作品で
ビルのマネージャー(ジョー=グレガー・フィッシャー)の姿もありました。

周りがとんでもないぶん、シャイロックが余計まともに見えるんですがね。
まるで『いつか晴れた日に』のブランドン大佐のように←ソコマデ言ウカ!?(; ゚д゚)ポカーン
よって本作の『いい男』ランキングは
シャイロックがダントツの1位で、男装のポーシャが次点。あとはカスです。
事件の前と後で人間的に成長したのはアントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)。
寺尾聡じゃなかったんですね…ワカリキッタコト言ウナヽ( ・∀・)ノ┌┛ガッΣ(ノ`Д´)ノ !!!

映画を見ているうち、現代のいろいろな事件が頭をよぎります。
街の片隅に押し込められ、抑圧された生活を送るユダヤ人たちは
「防護壁」に囲い込まれたパレスチナ人を思わせます。
金貸しをさげすみつつも彼らに頼り、借りた金で来る日も来る日も酒色にふけり
見せ掛けだけの栄耀栄華に浸っている「自由都市」ヴェネチアには
アメリカはじめいわゆる先進諸国の姿が重なります。
つつましいユダヤ人にしてみれば、ヴェネチア人はさぞ堕落して見えたことでしょう。
それに法廷の場。「正義」とか「公正」とかいっても結局は富や権力を持った
強者に都合よく解釈されてしまう世界情勢そのままです。
緊迫した法廷を経て結局誰も命を失うことなく、まずは大団円とも見えますが
娘を奪われお金は戻らず、改宗までさせられたシャイロックの悲しみや恨みは置き去りのまま。何ともやりきれませんがこれもまた
「世の中そんなにスッキリ白黒つけられるもんじゃないんだよ」との暗示とも言えそうですね。
このように、時代物でありながら現代的な切り口で捉えられるあたり、
真の古典はいつまでも生命を保つのだと改めて感嘆した次第です。

ちなみに…前々からスネイプ先生のローブがルネッサンス風ではないかとにらんではいたのですが、この作品を見て推測が裏付けられた形になりましたので、大変嬉しいです。
(法学博士の衣装なんか、まさにそのもの)
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by oka002 | 2006-01-19 13:54 | 世界は舞台 人生は花道 | Trackback | Comments(0)